フランス通信(175) 五月                 Paris,le 25/05/2020

 

*5月に (AU MOIS DE MAI) : “五月は唄う、、、”春の春、花の季節、、、いつもでしたら花を訪ねて歩く頃ですが、315日に外出禁止令が布かれてより出掛けることもせず、511日に禁止令は解除されたものの、コロナウイルスの感染は広く続いて、実は緩和されただけ、相変わらず外出を謹んでいます。こういう時に限って毎日が初夏の様な暑い位の天気、一度だけ雷を伴った大雨がありましたが、概ね好天が続いています。アパートのテラスから毎日見る景色は、若葉からすっかり緑の豊かなものとなり、テラスに咲く紅いゼラニウムの花、シブレットの紫の小さい花、やはり小さな12輪の薔薇の花、そして今年も生った11個程の未だ小さく青い杏の実が大いに慰めとなっています。遠く地平線近くに見えるパリ・オルリー空港に普段なら15分おきとは云わず離着陸する飛行機の姿は無く、双眼鏡で覗けば、飛ばなくなった沢山の飛行機がずらりと並んでいるのが見えます。時々丘の向こうのヴィラクーブレー空軍基地への輸送機が上を通り過ぎ、近くの循環器専門病院へ患者を搬送するヘリコプターが日に何度もやって来るのはいつもと変わりありません。しかし家に居れば居るで何かとやることもあり、時々は病院や診療所と電話で結んで日本人の留学生や派遣員の家族の診療の通訳を務めたり、古新聞や雑誌を切り抜いては捨て、整理整頓迄はまだまだですが、片付けものは山ほどあり、この際は特に急がずのんびりと過ごしています。皆様は如何お過ごしですか?

 

現在の“予定”では、カフェやレストランばかりでなく6月上旬迄 映画館、劇場、美術館、体育館、公園、古城、名所旧跡、、、全てが閉まっていて、催事・祭事も延期や中止の為、ご案内出来るものが特にありませんので、先信174号に続き < ça et là >“サ・エ・ラ”と題して日々のメモから色々と様子をお伝えすることに致します。ご了解よろしくお願い致します。

 

*「サ・エ・ラ」“続・コロナウイールスの脅威” « la crise du Coronavirus COVID-19(suite) »511日、315日発令以来の外出禁止令が、沢山の疑問を残して解除されました。実は解除というよりも緩和されたと云う方が正しいかもしれません。当初は65歳以上の高齢者と身障者等はそのまま自宅に留まる様に、とのことでしたが、これは一種の「差別」(la discrimination)との強い批判が出て、全ての人となり、外出時に必要であった面倒な外出証明書は不要となり、それ迄外出は1キロ以内・1時間以内・1人で、、、という制限も100キロ以内は自由となり、気分的にも少し楽になりました。但し、通勤・通学時の午前1030以前と午後330以降の電車・バスの利用と100キロ以上の距離に出掛けるには理由書の携行が義務づけられ、交通機関の70%の運行が再開されました。車内でのマスク着用が義務付けられましたが、相変わらずのマスク不足に、国鉄やパリ市交通営団が無料配布すべきとの声が高まりました。一方では41ヶ月と511日迄は外出禁止令下で電車・バスを利用しなかった人が大半でしたので、その間の利用の有無に関係なく定期券(Navigo)の約1ヶ月半分の料金が一斉に払い戻しが決まり、割引運賃適用の私の券(50%)に対しても返金が為されました。さて、マスク(le masque)ですが、当初一般的にはマスクを掛ける必要はない、と云っていた厚生省が、今度はマスクは伝染予防に掛ける様に勧めますが、現場の医療担当者にすら不足気味ですから、マスクを掛けろとは云えません。手話は手指ばかりでなく、顔の表情も大切なので、マスクを掛けての会話は出来ないそうです。急に国内で生産したところでとても間に合わず、毎日のように中国から医療機器と共に大量にマスクを輸入しますが、空港での盗難、書類不備や不良品、規格外での送り返し、等々で品不足は一向に解決を見ません。薬局には「マスク、体温計、アルコール消毒液はありません」と掲示されたままです。外出禁止令が解かれて、幼稚園と小学校は512日開校が決まりましたが、登校にマスク、、、、子供用のマスクがあるのでしょうか、、、。427日、薬局に医療関係者と病人用にストックされたマスクを一般に売り出す許可が出ましたが、2軒に1軒、、、売値もバラバラ、すぐに売り切れました。薬局でやっと手に入れたけれど、中の説明書が英語で記されていて解らないというクレームもあったと聞いています。嘗て私達が冬期の寒さ除けに、春の花粉症予防にマスクを掛けていると怪訝そうな顔、中には隣の席を立っていく人が殆どだったフランス人が、今ではこちらがマスクを掛けていないと怖い顔をするフランス人、、、でも不慣れなのか、鼻が高いからか、鼻の形も色々、、、マスクがズレ落ちて鼻が出ている人も多く見かけます。マスク不足の現状から、自分で飛行機のアイ・マスクやブラジャーを改造したり、サイトで見つけた型紙で、余り布や好みの素材でハンドメイド、、、プレタポルテやオートクチュールのアトリエが手持ちの生地で洒落たマスクを作り、商品としてウインドーに並べる店もありますが、消毒など規定通りに為されているのかは甚だ疑問です。それにマスクは1枚持っていればよいと云うものでもありません。職場などでマスクを義務付けられると、低所得者にとってはかなりの出費になるとの意見もあります。ある新聞は「政府が2009年に鳥インフルエンザに対する医療計画に失敗、ワクチンを大量に購入したが、大流行に至らず、国家予算の無駄遣いに終ってしまった為、それ以来パンデミック対策には国家予算を削減、今回の初期の段階でも対応に遅れ、感染爆発時にはベッドも、スタッフも、全てが減っていて、十分な処置が出来なかった。更にマクロン大統領が政権を引き継いだ2017年に、国家の在庫にあった約7憶枚の非常時医療関係者用マスクを使用期限切れとして、担当局が処分し、必要な在庫の補充をしなかったことにも遠因がある、、」と書いています。フランスは年金改革反対を叫ぶ「黄色いベスト」運動以来、政府への抗議が1年半も続き、長期に亘るストライキなど社会運動の真っ最中にコロナ感染が起こったことも、対応の遅れの原因と云われます。お隣のドイツでは420日に外出禁止令が解除されましたが、2012年に流行病の最悪の事態を想定して備えていたので、今回はそれに従って各地方と医療関係者らに準備と措置を要請した為、対応も早かった様ですが、第2次感染拡大が心配されます。

 

418日:(1)入院患者数30639人(重症5833人)(2)死者31日以来合計)19329

 

424日:(1)28958(4870) (2)22245人  *51日:(1)25887(3878) (2)24594

 

*1890年以来の労働者の祝日「メーデー」と春を祝う「スズラン祭り」にデモも無く、スズランの街売りも無いのは第2次世界大戦以来初めての事、、、スズランの花は僅かにパン屋や肉屋の隅で売られ、スズラン農家は運賃が掛かるからと泣き泣き捨てました。 56日:(1)22724人(2868)、(2) 26230

 

510日:(1)22569(2776)(2)26380人、 *511日:(1)22284(2712)(2)26643人、

 

*数字の上では外出禁止令緩和の511日には入院患者数も重症者数も減ってはいますが、まだまだ感染拡大の危険はあります。久しぶりに友人・家族と会い、サン・マルタン運河やセーヌ河岸はシャンペンを開けて乾杯する人で賑わいましたが、直ぐに河岸での飲酒が禁止となりましたので「生きる歓びを求める人達に厳しい」と大きな話題になりました。

 

512日に大半の企業で事業が再開され、所定の勤務証明書を携行して、マスクを掛け、電車。バスの車内では2席に1席の使用、立ち席は各人が1m間隔で、、、とはいえ、マスクは駅頭で配布された所も多かったのですが、電車を待つプラットフォームや車内で間隔を置くのは不可能なこと、お互いけん制しながらの通退勤となりました。一方では、様々な分野の研究者達が、それぞれの分野での知識・経験から、商工業、文化事業、流通産業、飲食業、スポーツや観光事業、等々を今後どの様に運営していけばよいのか、各種の規制と時期を検討しました。これも何かで知ったのですが、国民の政府への信頼度のワースト1位は日本、何とフランスが2位との事、それに看護婦さんの給与は32ヶ国中フランスは22番目、、、マクロン大統領が病院訪問時に現場の看護婦さん達から直訴され、検討を約束する場面もありました。全体に収束に向かっていると云えないことはありませんが、気は許せません。3ヶ所の食肉工場で働く人達に患者が出て感染が分かり、肉を食べても大丈夫なのか、関係者は大丈夫とは云いますが、不安です。3月末でしたか、水道の水が汚染しているとの発表に大きな恐れを感じましたが、消火・散水用の水で飲料水ではないとのことで、あの時も暫らくは怖い思いでした。政府は皆に検査を勧めていますが、此方では鼻の穴に綿棒を突っ込むやり方で、大きな鼻で検査を受ける場面が何度もテレビに映って不快な思いです。この検査用の綿棒は国産ではなく、中国からの大量輸入になりますが、段ボール箱を開けて見たら、鼻用ではなく喉用のものだったという話が毎日のように続いています。

 

521日キリスト昇天祭の祝日(Ascension)は日中30℃に達する夏の様な暑さ、手紙を投函する為に久し振りに一寸出掛けました。暑苦しいからでしょうか、マスクを掛けてない人も多く、ある人は大げさに人を避けて通り過ぎ、角の草むらにはマスクが捨てられていました。

 

しかしTVニュースによれば、外出規制緩和後も29%のフランス人がそのまま外出をひかえて家に留まり、又若い人達の38%も相変わらず家から出ずに居るそうです。好天の日、週末の人出、マスクを掛けず、、、、これから第2波の感染ピークが訪れる可能性も十分にあります。

 

アパートのコンシエルジュが市の配給と云ってマスクを届けてくれました。何となく正体不明なコロナウイルス、、、ワクチンも治療薬も無く、諸説賑やかに、気を付けて、と云われても、一体どのように気を付けたらよいのでしょうか、、、、6月までは公園も閉まっていて、、、。車の通りも少なく、静かで、空気も澄んで青空が綺麗、、、その所為か小鳥達が沢山やって来て囀り、向かいのポプラの木にリスが棲みついて速足の木登り、、、夜になるとキツネやイノシシまでが歩き回っているのが見えて目を疑います。523日:入院患者17178人(重症1665人)、死者(31日以来合計)28332人、、、315日外出禁止令発令以来今日迄殆ど外出をせず家に籠り、しかし毎日をこんなにゆったり、のんびりと過ごすのは初めての様な気もします。皆様どうぞお元気でご無事に毎日をお過ごしになります様 心より祈り上げます。

 

「長引く外出禁止の結果、壁や植物に向かって喋るという行動は全く正常であって、相談に来ることではありません。しかし、壁や植物が返事をしだしたら、すぐに連絡してください。」(フランスの精神科医)

 

2020525Sainte Sophie日の出0557・日の入2138 天気:パリ朝夕11/日中24

 

曇天、ニース17/24℃晴天、ストラスブール9/22℃曇天、コタンタン半島8/19℃曇天   (菅)