フランス通信(171)睦月                 Paris, le20/01/2020

 

 「皆様、遅ればせながら新年のご挨拶を申し上げます。

 

今年もどうぞよろしくお願い致します。」    菅 佳夫

 

*正月(LE NOUVEL AN) : 年金制度改革反対を訴えて125日から始まったストライキが解決を見ないままに新たな年を迎えました。しかし、日の出が12分と早くなり、日の入りが遅くなって、次第に日が長く明るく感じられるのが、何か希望が持てるようで好いものです。このところ雲の流れは激しく早く、東に向かったり、西に向かったり、小雨に煙ったかと思えば、突然の強い風に小雪が舞ったり、時折眩しい様な強い陽光が春を思わせたり、変化に富んだ天気の毎日、しばらく声をひそめていた小鳥達が夜明け前の暗いうちから賑やかにさえずるようになり、木々の枝先が紅く膨らんできたように見えますが、芽が出るのは今しばらくの我慢です。目の前の未だ枝ばかりの2本のポプラの木(le peuplier)にカササギ(la pie)のカップルが飛び始め、近くの杉の木(le cèdre)に棲むカラス(le corbeau)とガチャガチャと騒がしく争い出したと思ってましたら、早くも巣作りを始めるようです。怠惰な職人が外し遅れた年末年始の飾りが残る新年の街、パン屋、菓子屋で売り出す公現祭(l’ Epiphanie)を祝う菓子“ガレット・デ・ロア”(la Galette des Rois) を飽きることなく頬張るうちに、旧正月、中国の新年「春節」が追いつきます。コート・ダジュールからは15日早いミモザの花便りが届き、パリ国際大学都市のキャンパスには寒桜(le cerisier d’hiver)が咲いて、連翹(le forsythia)の花がほころびました。

 

*公現祭とガレット・デ・ロア (l’ Epiphanie(=la Fête des Rois) et la galette des Rois) : クリスマスから12日目の16日、東方の3人の博士が星の導きで来訪、馬小屋の中に生まれたイエス・キリストが神の子としてこの世に現れたことを認めた記念の祝日で「博士達の祭日」 « Fête des Rois mages »と呼ばれていたのですが、いつの間にかそれが「王様の祭日」 « Fête des Rois »になり、次第に宗教色も薄れ、今ではガレット・デ・ロアという菓子を皆で食べる日となったようです。地方によってはドライ・フルーツ、砂糖漬けの果物やナッツが載ったケーキもありますが、一般に知られているものはアーモンドの餡(la pâte d’amandes)が入った平べったいシンプルなパイ菓子です。中にFève(そら豆)と呼ばれる陶製の人形などが隠されていて、家族や友達と食べる時は、一番年下の子供がテーブルの下に隠れて、菓子を切り分ける人が「これは誰に?」「次はだれに?」と問いかけると、「お兄ちゃんに、、、」「パパに、、、」と返事、こうして分けてもらった中にFèveが入っていた人が、その年の王様になって冠を頭にする、という慣わしです。ですからパン屋さん、お菓子屋さんでガレットを買うと必ず紙製の金銀の王冠を付けてくれます。一寸楽しく美味しい行事です。

 

*ストライキ(la grève, le mouvement social) : 年金制度改革への抗議から昨年125日に始まったデモ行進とストライキは、年末年始もそのまま継続、クリスマスや正月に里帰りする人達や休暇に出掛ける人達にとって不便この上ない状況となりました。パリ市内でもメトロ、バス、トラム、郊外線のRER、等々の交通機関がマヒした為、通勤ばかりか買い物すらままならず、市民を悩ませていますが、「不便に耐えてストライキを応援、支持します。不便にはもう慣れました。」との笑顔でのコメントが大半を占め、自転車や車の相乗り、中には遠路を徒歩で往復する人達も居て、驚きました。市民の足のメトロ14路線のうち平常通りの運行が為されたのは、完全自動運転で運転手が乗務していない1号線と14号線だけで、その他は完全に運休か、朝夕の通退勤時のみ、しかも3本に1本、4本に1本、終電車は1930分、、、、仕事を終えて1杯やれば、帰りの電車が無くなります。映画も観れず、レストランで夕食も容易ではありません。たまにやって来るバスやトラムはどれも超満員で、降りるも乗るも苦労します。ストライキは交通機関ばかりでなく教育機関、弁護士、病院、消防、警察、郵便局、港湾、精油、劇場、等々、広範囲に及び、最低限の業務を残してデモに参加、ストを決行しています。貨物列車や貨物船で運ばれたコンテナーはそのままで開けることなく、物によっては傷んだり腐ったり、、、です。既に40日以上経過した今日、多少の改良はあるにせよ「いつまで続くストライキ」です。クリスマス・プレゼントの売れ行きも芳しくなく、デパート、各種商店、レストランやカフェ、、、売り上げは大幅に減り、18日に始まった19世紀以来恒例の「ソルド」“冬物一掃大売出し”(les soldes d’ hiver)にも交通機関の乱れで出掛けようにも出掛けられず、診療や検査で病院に通わなければならない人達、各所渋滞の為タクシーも容易ではありません。その他の弊害としては、赤十字での献血が減り、慈善団体には食料や衣類等の寄付が少なく、、、、革命と云われた1968年、3週間ストが続いた1995年以来の強硬な、しかも無期限のストライキ、やがて大きな不況の波が襲ってくるのではないか、、、?余計な心配に終わればよいのですが、、、。今のところ毎日の食糧だけは、朝市やスーパー、個人商店も開いていて、贅沢を云わなければ不足はありませんが、一日も早くストライキが終わり、全てが平常通りに快復して、花咲ける春になるように願うものです。

 

「サ・エ・ラ」(« ça et là ») : 1)フランスの人口(la démographie)=国立統計経済研究所(INSEE :Institut national de la statistique et des études économiques)11日の発表によれば、フランスの人口は67064千人で前年比141千人増、出生率は欧州1位、平均寿命は女性が85,6歳、男性が79,7歳とのことです。2)不満なクリスマス・プレゼント=綺麗に包まれ、リボンを掛けられて、クリスマス・ツリーの根元に置かれたプレゼント、、、。子供達ばかりでなく大人も包みを開ける時の期待と喜び、、、。しかし開けてビックリ、中身にがっかり、気に入らなかったり、スイッチを入れても動かなかったり、払い戻しはしないのが原則ですし、わざわざ交換、返品、修理に行かねばならず、或いはネットで転売したり、、、消費者組合の調査によると4人に1人は不満なのだそうです。3)バスや電車の車内での優先位置このストで混み合っている時の88番のバスでのことです。或る停留所で、バスの降り口の袴を運転手が出して車椅子のご婦人が乗ってきました。皆が身体をづらせてやっと隙間を作りましたが、このご婦人は大きな声で「そこは私の場所だから退いて、、、!」と可成りの命令口調で云い、優先位置に居た人達を無理やりに退かしました。誰も何も言いません。降りる時は運転手も気を遣って車体を僅かに傾け、袴を歩道にぴったりと付けたのですが、「この前乗った時はこんなじゃなかった、もっと傾斜が緩かった、、、これじゃ怖くて下りられない、、、、。」結局は乗っていた男性が3人掛かりで車椅子ごと抱えて下ろしたのですが、ご婦人は不機嫌な表情で、メルシ―の一言も無く行ってしまいました。

 

スマホ」は“スマート・フォン”の略、「あけおめ」はスマホで“明けましておめでとう”の略、アプリ、コンビニ、、、、

 

2020120St.Sébastien 日の出0835・日の入1728 天気:パリ朝夕2/日中6℃曇天、

 

ニース6/15℃曇天、ストラスブール0/6℃曇天、、、、。    「改めていつもの今日の有難さ」(然)