フランス通信(173) 弥生                     Paris,le 21/03/2020

 

*3月に ( AU MOIS DE MARS ) : 今冬は寒さも厳しいことなく、雪も降らず終い、しかし、カリーヌ、レオン、ミリアム等と名付けられた100/hを超える暴風(la rafale)が、時には小さな竜巻(la mini tornade)を伴って次ぎ次ぎにやって来ては吹き荒れ、各地に甚大な被害を及ぼしました。3月に入ってから急に寒さを感じ、新聞にも「やっと冬」(Enfin l’hiver)と報じられた程でしたが、自然は強いもの、3月は別名で“桜月”、“花見月”等と呼ばれる通り、各地から河津桜や色々な春の花の便りが聞かれるようになりました。パリのモンスリー公園に春を訪ねましたら、水際に枝垂桜、草原の木々をバックに木蓮(le magnolia)が明るく咲いていましたが、悪天候(les intempéries)は相も変わらず、めったに晴れることも無く、時々の雨は冷たく、パリの洪水を防ぐ為に造られた4つの人工湖も間もなく満水、茶色に濁ったセーヌの流れは、水位の目印となるアルマ橋の橋脚に立つズアーヴ兵(*)の石像の足元を脅しています。日本の友人からの便りによれば“ホワイトデー”に一寸した降雪があったとか、、、。(*)ズアーヴ兵(le zouave) :クリミア戦争でフランス軍が勝利を収めたロシアのアルマで大いに活躍した“ズアーヴ”と呼ばれるアルジェリアの歩兵

 

*新コロナヴィールス ( CORONAVIRUS / COVID-19 ) : 定年退職制度の改定に反対して128日から続くストライキが解決しないままに122日に中国湖北省武漢からボルドーに帰った人が発病、同じ日パリでも観光客2名が陽性と解り入院、新型コロナヴィ-ルスによる肺炎と保健省から発表がありました。中国ではその後急速に蔓延し、危険も大きくなった為、フランス政府は数回飛行機をチャーターしてフランス人とヨーロッパ人を引き上げさせ、南仏の休暇村に収容して2週間監視下に置きました。しかし、蔓延の勢いは強まるばかり、225日には患者11名/死者1名、3月に入って5日には患者も377名死者6名、翌36日には何と613名/9名にもなりました。391191名/21名、11228148と感染率と致死率が倍々に上がりましたので、世界保健機構(WHO(OMS : Organisation mondiale de la santé)はパンデミック(Pandemic世界的大流行の感染症)に指定しました。因みに過去20世紀100年の間に“パンデミック”に指定されたのは、スペイン風邪(1918)、アジア風邪(1957)、そして香港風邪(1968)3つです。マクロン大統領は312日患者数2876名/死者61名との数字を受けて、TV演説を行い、感染拡大を防ぐ為国民に協力を要請、政策・方針を発表ました。それによると国民の健康を最優先、病院の受け入れを強化、70才以上の高齢者、障害者、慢性病持ち、呼吸器系の病人等は出来る限り外出を控える、、、感染拡大を防ぐ為316日から次の指示がある迄(jusqu’à nouvel ordre) 託児所、幼稚園、小、中,高、専門学校、大学、大学院を閉鎖、企業に対してはテレワークの促進、移動は必要最小限に、集会は制限する、等々国民の連帯を呼び掛けました。続いて感染者4499名/死者91名に急増した314日にはフィリップ首相が同様にTV 演説を行い、 同日24時から新たな指示がある迄相変わらず賑わっているカフェ、レストラン、映画館、ディスコ、等を閉鎖、食料品、薬局、新聞雑誌、ガソリン・スタンドといった生活必需品販売を除く全ての商店の閉鎖を命じました。各種の会合、集会を禁じ、教会など宗教施設は閉めないが、集会は禁止又は延期、折からキリストの復活祭に向かっての儀式、それに結婚式や葬儀も不可、、、、都市交通は平常通りに運行するが、次第に減らして、人々の移動と接触を少なくして感染拡大を防ぐ様に呼び掛けました。更に316日再びマクロン大統領がTV演説を行い、まず第一に感染拡大(la propagation)を抑制する為に「厳格な移動の制限」を宣言、実際には自宅待機(le confinement)を基本とした外出禁止令を打ち出しました。それによると317日正午以降15日間は外出禁止、自宅待機を原則、但し、外出が許されるのは、身分証明書と共に所定の外出証明書( ATTESTATION DE DEPLACEMENT DEROGATION・各自で内務省のサイトからダウンロードして印刷)を作成・携行することを第一条件として(1)在宅でテレワーク不可の場合の通勤、職場の保証書を提示(2)近場の商店での食料品を始めとする日用雑貨の買い物(3)診療・検査・治療等医療施設や薬局への往復、予約券、処方箋を提示(4)子供、病人、身体障害者、高齢者の世話(5)個人的な運動(ジョギング、体操、、、犬の散歩も)但し、自宅周辺で集まりを伴わないことを条件としています。この証明書のフォーマットをスマホにインプットして提示した人も多かったようですが、紙に印刷したものでないと有効ではないとのことです。違反には130€以上の罰金が課せられる由。集会は例え家族や友人間であっても禁止、公園も閉鎖されました。しかし、健康維持の為のジョギングや犬の散歩は許されているとして、セーヌ河岸、モンマルトルの丘、ニースの海岸道路、各地の海岸などに人が出て、感染拡大抑制を目的とした外出禁止令も何も意味が無く、その後海浜は立ち入り禁止措置が採られましたが、マクロン大統領は今夕辺り、国民の自覚と規律、理解と協力を求めて又TV演説を行うのではないか、との予想です。((*先刻ニースの海岸通りは通行止めとなり、パリ市内セーヌ河右岸・左岸、アンヴァリッド前の広場芝地、エッフェル塔下シャン・ド・マルス緑地帯も通行禁止となりました。)一方、街のあちこちに出動の警察官や兵隊に化けた罰金目当てのニセの私服警官が横行、、、 « Ensemble à la maison »「我が家でご一緒に」と題して、自宅からTVを通じて演奏を聞かせているポピュラー歌手やクラシックの演奏家も居ます。街によってはスーパー等でペーパータオルやトイレットペーパーを取り合って喧嘩になったり、パスタや砂糖などの棚が空っぽだったり、、、の場面をTVニュースで見るものですから、買い物に出る勇気がなく、初めてサイトで注文して配達を頼んでみました。注文した品が全ては揃いませんでしたが、翌日配達がありました。戸口にダンボール箱を置いて急ぎ立ち去った若者のいでたちは月光仮面を思い出させるものがありました。「、、、ハヤテの様に現れて、ハヤテの様に去って行くゥ、、、」「 « Restez à la maison » 家に居なさい!」台所の窓から下の通りをボンヤリと眺めていましたら、近くのパン屋で買ったバゲットを2本手に持った人がのんびりとした感じで歩いている、ごく当たり前の風景があり、何となくホッとしました。

 

« CORONAVIRUS – COVID 19 » 私は「小人19号コロナ君」と呼んでますが、今日は患者数が1万人を超えました。これからどうなるのでしょうか、、、。軍の病院、私立の病院・診療所、、の受け入れ態勢も整ったとの事ですが、蘇生装置が不足していることが問題との事です。そして現在約13万人のフランス人が外国に居て帰国を希望していますが飛行機が飛んでなく「自分達はフランスに見放された、、、」と各地の空港に集まって騒いでいる様子ですが、今のところ政府は応答していません。しかし、こうしたフランス人の気質に対して、全体的にこの位厳しく対処するのは当然、との意見も多く見られます。

 

今号はコロナヴィールス騒動にて美術館など各所が現在のところ無期限に閉鎖されている為、美術展などの催事はご紹介出来ませんでした。また、沢山の方々からお見舞いを頂きまして、ありがとうございました。その中で「諸説ふんぷん、どれが正解なのかさっぱり、、、何に気を付けてよいのか分かりませんが、お互い気をつけましょう。」と云うのがありました。皆様どうぞお元気に毎日をお過ごしください。

 

2020321Ste.Clémence 日の出0650・日の入1905 天気:パリ朝夕6/日中11℃曇天、ニース9/16℃曇天、ストラスブール8/9℃曇天。時々の温かな陽光に春を訪ねて歩きたいのですが、今のところはそれも出来ず誠に残念、、今頃は、と想像しています。「咲く花に春が来たねと話しかけ」菅